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Interview “Do my Best!”

―師弟関係で受け継がれる哲学がある― ゴルフコースメンテナンスの仕事

ゴルフ事業部 第1統括部 手塚 泰雄 部長 ゴルフ事業部 第1統括部
千福事業所
前田 正二 所長

My Best Project

ファイブハンドレッドクラブ

風光明媚な富士山南麓に、昭和52年(1977年)に作られた由緒ある名門ゴルフクラブ。当時の東急電鉄社長 五島昇氏の肝いりで開発され、コース設計は、その作品に高い評価を得ている名設計士である宮澤長平氏が手掛けています。当社のゴルフ事業の始まりは、このゴルフクラブの開発がきっかけになっています。オープン時から40年を超える年月、このゴルフクラブの格式にふさわしい美しいグリーンを守るべく、コースメンテナンスに務めています。

東急グリーンシステムのゴルフ事業は、ファイブハンドレッドクラブと共にスタートされました。改めて「事業・業務」の説明をお願いします。

手塚:ゴルフ事業部では、各クラブのオーナー様から委託を受けて、ファイブハンドレッドクラブのように、新規の開設に伴う準備・開拓からオープン後のコース管理作業まで行っています。現在、全国で20余りのコースを管理しています。
ゴルフクラブでコースメンテナンス業務の中心を担うのが、グリーンキーパーです。グリーンキーパーは、グリーンの美しさを保つだけではなく、事故につながったりプレーに悪影響を与えたりするような不備がないかをチェックし、要因をコースから取り除くといったことまで、コース管理の全権を担う重要な役割です。ファイブハンドレッドクラブを設計された宮澤先生から授かったコース管理についての教えを代々のグリーンキーパーが受け継ぎ、美しいコースを守っています。
私も、大学を卒業して当社に入社し修業期間を経て、19年前にあこがれのファイブハンドレッドクラブのグリーンキーパーになりました。その後、約15年間キーパーを務め、前田に役割を引き継いだのです。

コース管理をする上で、皆様が大切にされている「モットー」はどういったことでしょうか?

前田:重視しているのは、グリーンの品質と景観です。お客様であるゴルフ場が求めている以上のものを提供しようという思いで、常にコース管理に当たっています。プレーヤーがコースに立った時の喜びを最大限に感じていただくために、コースの隅々まで目を配り、整備をしています。当社スタッフは、毎日必ず作業前に1時間程度かけて18ホールをすべて巡回します。プレーヤーに感動を与えるためにはできる限りの努力をしなければいけません。千福事業所には10人のスタッフがいるのですが、そういう意識をスタッフ教育から徹底しています。
また、コースが美しいことで、ゴルフ場のフロントやレストランのスタッフやキャディーの方々などが胸を張って仕事をしていいただけると思うのです。自慢のゴルフ場で働いているのだ、とゴルフ場全体の士気が上がることで活気に満ちあふれ、プレーヤーの満足度も高まると思っています。

そうしたコース管理の哲学は、どのようにして受け継がれていくのですか?

手塚:グリーンキーパーとその下に付く当社のスタッフの師弟関係を非常に重要視しています。例えば、始業前の見回りの際には、経験のあるスタッフが若手を連れていきます。そして見て回りながら、「ここはああした方がきれいになるね」など、現場で説明して気付きを毎日共有するのです。スタッフたちは経験をする中で、よりグリーンキーパーという役割にあこがれ、自分もなりたいという思いを醸成していきます。
先輩グリーンキーパーも「自分の目は2つしかないんだから、多くの目を作りなさい」と歴代のキーパーから教えられていて、後輩たちが向上心をもって自分にいかに近づいてきてくれるか、ということを意識しながら教育しています。

チームでコース管理にあたっているということが、東急グリーンシステムならではの「強み」となっているでしょうか?

前田:教育制度が整っていることは当社の強みだと思います。私は元々ゴルフ場のスタッフだったのですが、当社に委託管理が決まったタイミングで転籍しました。各ゴルフ場にグリーンキーパーは当然いるのですが、当社のような後輩を育てる文化をもつゴルフ場は少ないように感じます。キーパーにとっては、ライバルを育てることになるので、作業員的な扱いなのです。そういう意識だったのが、当社に入社すると環境がガラッと変わり、自分もキーパーになりたいと、いろいろ勉強するようになりました。

手塚:師弟関係による縦のつながりもそうなのですが、スタッフ間で情報共有をしているという横のつながりも当社ならではの強みです。通常のキーパーは自身の体験をもとにコースを管理されていますが、当社の場合は、全国で管理している20余りのゴルフ場で起きた小さな失敗も社内で共有するため、その失敗の数だけ新しいノウハウや知識が増え、コース管理の質は高まっていきます。当社ではそうした失敗談を1年分まとめて報告し合う発表会を開催するぐらい重要視しています。

コースメンテナンス業務を行う上での「喜び」はどういったものでしょうか?

手塚:私たちの顧客はゴルフ場なので、直接プレーヤーの声を聞くことはありませんが、ゴルフ場の支配人やキャディーマスターから「今日も喜んで帰っていただけた」と聞くたびにやりがいを感じます。また、そう伝えてくださるゴルフ場のスタッフの喜びを支える役割も担えていると感じます。
繰り返しになりますが、美しい自慢のゴルフ場で働いているという思いは、スタッフの士気を高め、ゴルフ場全体が活気に満ちあふれていく。そしてゴルフ場の収支も上がっていく。そうした好循環を生み出せる関係を築けることが、厳しいゴルフ業界の中で生き残っていくための一番のお手伝いであると考えています。

お客様との理想的な関係を築いていくために、今この場でできる「約束」を教えてください。

前田:与えられた予算の中で、常に最良のものを提供することをお約束したいと思います。
最良のものであることをお客様にも納得していただくために、当社では管理内容を全て数値化しており、例えば芝の色の評価レベルなど、その数値をクラブと打ち合わせのたびにご提示し、共有しています。
芝は生き物ですから、時にはグリーンの状態が悪くなる場合もあります。そうした場合にも、数値をみせながら対応策を示すとお客様にご納得していただけます。分かりやすく状況を共有するというのも、プロとしてお約束できる「安心」だと考えています。

東急グリーンシステムが提供する品質の高いコースメンテナンスを広げていくために、「どんな未来を、みどりで描いていきたい」とお考えですか?

手塚:私は営業として、1年に1コースずつでも受託物件を増やしていくのが目標です。また、50コースでも100コースでも、現在の品質を保ったままコース管理ができる体制を作りたい。そのためには、それだけ優秀なグリーンキーパーを育てていかなければならないと使命を感じています。

前田:私は現場の人間として、コース管理のクオリティーをもっと向上させたいというのが目標です。当社では今、ドローンを使ったコース管理ができないかと資格を取りながら試行錯誤しています。そういう先進的なものも取り入れつつ、先輩たちから受け継いだ教えを大切にし、芝の管理だけではなくて総合管理として、もっとお客様に満足していただけるサポートがしたいです。

インタビューは制作にかかわる最低人数で実施し、換気性の良い広い場所で、検温、マスク着用など、新型コロナ感染症対策を取った上で、撮影時のみマスクを外して行いました。(2021年5月実施)